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学生の心に火をつける(その2)

前回は、日本語学習に興味を失った民間短期大学の学生たちの心に火をつける方法についてお話しました。
今回は中国のトップレベル・清華大学で日本語学習に興味を失った学生たちの心に火をつける方法についてお話します。
清華大学で教鞭をとり始めて最初の2週間、学生たちから、「音読によってインプットするやり方にはチャレンジ性が感じられない!」という理由で反対されました。そこで、どうすれば良いか、学生たちに提案してもらいました。
3週目の授業から、わたしはラジオパーソナリティになりきりました。「では、今日のレッスンは、李さんからのリクエスト、『発言するときは、必ず2つのオノマトペを使って発言しなければならない!』を採用したいと思います」などと言うと、毎回、「キャー」という女子学生たちの黄色い声が教室内にこだましました。
新聞授業では、私がニュース記事を読み、「この記事についてどう思いますか?」と質問すると、どの学生も「すごいです」「怖いです」と、たったひとことで答えるか、「感想はありません」と答えるかのどちらかでした。しかし、「必ず2つのオノマトペを使って発言しなければならない」というルールを設けると、日本語が苦手だから、意見も感想も言えないだろうと思っていた学生も、ある程度話してくれるようになりました。
討論やスピーチ授業では、数名がやさしい審査員役と厳しい審査員役を担当し、厳しい審査員は、ルールとして、どんなに素晴らしい発表を聞いても揚げ足を取りました。まず、「あのさ、やる気あるの?指摘したい点が3つあるんだけど」と言ってから、相手がムカつくポイントを3つ言わなければなりませんでした。ただ、全員がこのルールをわかっていたので、どんなにひどいイチャモンも、大爆笑を誘うことになります。吉本新喜劇のやすえ姉さんが他の芸人に散々罵声を浴びせたあと、「怖かった…」とひとこというだけで、暖かい笑いに包まれるのと似ています。 厳しい審査員によって、「ネガティブ・フィードバックって感じが良くないよね!」という、共通認識ができました。
事前にルールを決めると、程よい緊張感が生まれ、ある程度盛り上がることは保証できます。
その他、エピソード・トークをするときに、N1文型をひとつ使わなければいけない。面白いストーリーを悲しげな表情で話さなければいけない。話し始める前に、「ハーバード大学○○教授の研究によると」を言わなければならない。前の発表者の発表に対する感想を30秒ちょうどで言わなければいけない。発言中の30秒間、まばたきをしてはいけない。時には、わざと間違った文法で話さなければいけない。などというルールを設け、その日によってルールを変えますが、ゲームを楽しむように日本語を学んでもらいたいという願いを込めました。
慣れてきたらわざわざルールを決める必要はなく、マンネリ打破したいときだけ、ルールを決めました。そして、このゲームで活躍していた学生たちが、全国卒業論文コンクールで、毎年一等賞か二等賞に選ばれ、スピーチ大会でも、面白い即興スピーチをしてくれました。
彼らは、チャレンジ性のないやり方を心底毛嫌いしているらしく、面白みがあって、身につけるとすぐに役立つスキルを心底求めていたようです。それに、一旦やる気が芽生えたら、スキル習得まで努力を惜しまず、目標達成までの執念も凄まじかったです。
とりあえず、前回と今回、やる気のない学生の心に火をつける方法についてお話しました。
次回は、学生の発表を聞いた教師自身も「私、できるかしら」と心配するほど上手に発表する秘訣についてお話したいと思います。学校の成績が良い学生、成績がよかった学生の特徴は、他人から賢い人だと見られたいので、賢そうな話し方、言い回し、構成をマスターするのが速いところです。
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