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学生の心に火をつける(その1)

「やる気の出ない学生に対して、どう対応すれば良いか」という相談を受けましたので、なにかの参考になればと思い、少し書いてみることにしました。
大学入学後、わたしは塾講師になりました。本日は、そのときの授業のやり方をご紹介します
当時、その塾ではレベル分けがされていて、わたしは点数の低い生徒が集められたクラスを担当しました。1ヶ月後、そのクラス全員が、選抜クラスのトップの生徒より高得点を取りました。それから塾全体の空気が変わり、当時のわたしはいまのようなメンタルがなかったので、塾を去ることになります。
しかし、そのやり方は、10数年後、中国で日本語教師デビューをした民間の短期大学の学生たちの上達をサポートしました。
一例ですが、社会の先生が「1603年に徳川家康がなにをした?」と生徒たちに質問すると、優秀な生徒が「江戸幕府を開きました」と答えます。ほかの生徒たちはなにも言えません。そして、日本史への興味を失うという反応を起こすことになります。
塾に来ても成績が伸びない生徒たちはすでに勉強への興味を失っているので、いくら丁寧に説明しても、彼らの成績は一向に伸びませんが、
「1590年 豊臣秀吉が天下統一する」
「1600年 関ヶ原の戦いで徳川軍が勝つ」
「1603年 徳川家康が江戸幕府を開く」
これらをクラス全員で合唱するように、10回ずつ音読をした後、わたしが、
「1603年に徳川家康は何をした?」と質問すると、クラスの半数以上が「江戸幕府を開いた!」と答えるのでした。
すでに音読した内容を、残り10分で何度も何度も確認します。
「1603年に徳川家康は何をした?」という質問も、4回目ともなれば、日本史が苦手だった生徒も、間髪を入れずに「江戸幕府を開きました」と答えるようになります。
中国の短期大学での日本語授業も同じスタイルでやりました。まず、答えを10回音読、複雑な例文なら20回大きな声でリズムよく音読しました。
ひととおり音読が終わると、教室は熱気に包まれます。その後、中国語から日本語への翻訳の確認、穴埋め問題の確認を何度もやりました。やればやるほど、学生たちの反応は早くなりました。卒業後、勇気ある学生たちが、北京大学、北京外大の本科に移る試験に合格しました。
彼らは、親から「勉強しろ」と言われ続け、勉強嫌いになり、自己肯定感が得られない日々を送ったことで、「自分は勉強ができない能力のない人間だ」という演技を、最初、わたしに見せようとしていました。しかし、反復音読によって記憶力が良くなり、ついつい、正しい答えが口をついて出てくるようになると、自分の無能さを示すことができなくなりました。
演技をやめ、勉強の面白さがわかり、勉強好きになり、自分で勉強をやりはじめました。
ところが、音読を繰り返し、その後、同じ質問に何度も答えるやり方は、講義形式の授業に疑問を抱かない一部の優秀な学生や優秀な教師にとっては、受け入れがたいことなのでしょう。
2ヶ月後、清華大学に移ったのですが、清華大学での最初の2週間は、先程ご紹介したやり方が通用しませんでした。チャレンジ性が感じられないというのが理由です。
次回、立ちはだかるこの新しい壁によって、優秀な学生たちがやる気になる授業法を編み出すことになります。
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