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Linc 講演会

今夜は、日本語学校の校長先生や理事長の方々、日本語学校を経営されている皆さんにスピーチをする機会に恵まれました。オンラインでご参加されたみなさま、途中、音声が入らなかったこと、本当にすみませんでした。

事前アンケートを拝見したところ、みなさんの悩みは、「どうしても、こなさなければならないカリキュラムがあって、発音や会話練習に時間を割くことができない」ということでした。

日本語学校の先生方は授業の準備を一生懸命にやって、授業中は、語彙や文法の説明をしっかりやっているそうです。でも、なかなか成果があがらず、先生は自信をなくし、学生も授業に興味を持てないでいて、双方苦しんでいるということでした。

でも、私たちが中学高校6年間英語授業をあれだけ受けてきたのに、英語が使えませんでした。一部の成績優秀な学生でも「独学・自学・自習」をしなければ、結局英語をものにはできません。

わたしも長らく中国の日本語教育現場にいて、日本語のよくできる学生=授業をまじめに受けていた学生ではなく、自分で日本語の勉強を一生懸命にやっていた「独学」学生だったところを、さんざん見てきました。

独学・自学・自習する学生はすぐに気付きます。「あれ?学校で習ったものは、バイト先で店長や先輩に使えないし、友だちに使ったら、変な顔をされる。なんだか、へんだぞ」と。そして、そんな学生だけが、バイト先で、目上に対する丁寧な言葉づかいや、礼儀正しさをそこで覚え、友だちに対するタメ口をそこで覚えます。教室以外で、自国の友だちとのおしゃべりに終始している学生たちは、気づくべきところに気づかず、留学を終えて、「ああ、自分は語学の才能がなかったな」と判断をくだし、自分はダメだと自分で烙印を押すのです。

「じゃあ、どうすれば良いのか!」ですが、教師は「教科書日本語が使えない」ということを、まず自分の学生たちに白状し、「自学・自習をしないと語学はマスターできないから、授業をまじめに受けているだけじゃダメだ」と白状することから始めなければいけないと思います。そして、教科書日本語を丁寧日本語とタメ口日本語に直して、3つを何度も学生たちと一緒に朗読して「日本語の口」を作ります。学生たちは次第に3つの違いがどこにあるのかに気づき、文法のルールを自分で発見するので、文法に興味を持ち始めます。

誰もが自分でルールに気づきたいので、先生にネタバレをされたら、学生はがっかりするだけです。

日本語教師は、「あの」授業のやり方で学生のモチベーションを下げ、自分が思い通りにならないと不快な表情を出して学生のやる気を削ぎ、語彙と文法の説明(ネタバレ)をして、学生をがっかりさせます。

ただ、学生の話す能力を高める方法はあります。

学生は、その日習った例文の中で、どれが一番印象に残ったのかを考えて、隣の人と一対一で話し、次にグループでさっきと同じ話をして、最後に全員の前でまた同じ話をするのです。すると、全員の前で流暢に話している自分に驚き、「自分は本番に強いヤツだ」と考えるようになるのです。

学生が自信をつける流れを作るのが先生の仕事です。

授業中、教科書日本語以外に、バイト先で使える日本語と友だちに使うタメ口も練習できたら、「これは普通の授業じゃないぞ。オレはもしかしたら、すごいところで勉強しているのかもしれない」と思うようになります。それに、3つ並行して勉強していたら、教科書日本語を覚えるのがたやすくなるので、試験で迷いがなくなり、高得点がとれるようになります。教科書日本語だけを覚えるのは、おかずのない白米を朝昼晩と出されるようなものです。

もし、授業で学生が話す機会、話す自信がつく機会を与えてくれる先生が学校にひとりでもいたら、語彙や文法を説明する先生も助かります。なぜなら、自分で文法のルールを見つけるクセがついた学生は、先生が語彙や文法を説明しているときに、頭の中で、クイズ番組が繰り広げられていて、説明を楽しく聞くことができるからです。

学生の能力を授業中に伸ばせる先生を各校ひとりだけ育成して、ほかの先生をいまのまま変えないというのが現実路線かもしれません。でも、たったひとりいるだけで、どの学校も、状況は一変すると思います!

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