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自分は練習生

新米教師が清華大学で教鞭を取るようになると、そこに、すごい同僚がいました。その時、「これはもうこっそり生きていくしかない」と思いました。しかし、『朱に交われば赤くなる』のことわざ通り、不思議なもので、読書をすると読んだ内容が簡単に頭に入りました。天才たちの中で自分も天才になれたような気がしました。昔、日本のサッカー選手が欧州のクラブチームに練習だけ参加させてもらっていたことがありましたが、清華大学で教鞭を取りながら、「自分は練習生のようなものだな!」と思いました。当時、基金の専門家の先生から「清華大学の先生になれるなんてすごいですね」と言われ、「いえ、僕は練習生で、単なるアルバイトです」と答えてしまったせいで誤解させてしまいました。「正規に採用していただきましたが、足りないところが多く、自分は練習生になったような気持ちで今、一生懸命に頑張っています」と話していれば、その後の面倒なやりとりはなかったはずです。
長くなってしまいましたが、当時のすごい同僚の先生と昨夜はオンライン飲み会をしました。ブラジルで日本語を教えられている林先生がセッテングしてくださいました。新米教師だった頃、同僚だった駒澤千鶴先生は、コロナ前に二度、ブラジルのイベントに招待され、そこで林先生と知り合われたそうです。
さて、かれこれ20年以上前のことですが、駒澤先生は大学の教師全員が協力してやってもできないような作業を、たった一人で、軽々とやってしまうタイプの先生でした。ただ、あまりにもすごかったので、至るところで、「大学教員は研究に専念して、授業は駒澤先生にアウトソーシングすれば良い」という声が出ていましたし、同時に駒澤先生をライバル視する先生もいました。私は勝手に憧れを抱き、駒澤先生のすごいスキルの中から自分にもできそうな部分を丸パクリしたいと考えました。また、優秀な教え子から勉強の方法を教えてもらっていました。さらに、教え子の中には、『三国志』や『項羽と劉邦』といった本にたまに登場するような「チャンスが来るまで自分をアホに見せ、適当に過ごしているような学生」までいました。勉強で成功した人が集まる大学で、プライドが特別高い学生が多い中、アホなフリしてペコペコしながらポジションを手にする学生は、どこへ行っても歓迎されていました。
「ひとのすごいところは丸パクリしたい!それがうまくできない不器用な自分が憎い!」と思いました。ただ、自分をアホに見せる才能だけはあったようで、すぐに「自分が生きる道はこれしかない!これだ!」と思いました。人前で緊張し、うまく話せないような学生にスピーチ指導をする際、椅子の上に立ってもらいました。彼女は高いところから私を指差し、「おい、オイカワ、今から私のスピーチを聞け!わかったか!」というと、私は土下座するフリをして、「は、ははー。かっ、かしこまりました!」と答えました。すると、一瞬にして堂々とスピーチができるようになり、劇的な変化を遂げた学生は、自分を変えた先生として見てくれるようになり、とたんに礼儀正しくなりました。また、いわゆる「どもり」と言われる生まれつき吃音症の学生も、しばらく一緒におしゃべりをしていると、自然とどもりが消えました。
そんな当時をよく知る駒澤先生ですから、昨夜は懐かしい話が盛りだくさんでした。若い頃から世界中を飛び回っていた駒澤先生を見て、「いつか自分だって世界を飛び回り、学生たちみんなに幸せな時間をプレゼントしたい!」と思っていました。「ねえ、ブラジル行ったけど、みんな親切で、最高に楽しかったよ!お姉ちゃんに合うと思う!」と話すと、駒澤先生は即行動に移されました。そういえば、そういうところを真似したいとずっと思っていましたから、自分も次第に即行動に移せるようになり、自分から学生に声をかけ、ひとの話をゆっくり聞き、受け入れて共感するなど、数え切れないほどたくさん真似をしてきました。
いつになるかわかりませんが、またいつか世界各地へ行けると思います。世界中の学生たちはみなキラキラと目を輝かせ、幸せオーラ全開でスピーチを聞いてくれますから、ありがたい時間です。
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