イベント情報

世界の日本語作文コンクール

ある社長さんから講演の依頼がありました。来月東京に参ります。

4年前に逆転人生を見てくださったそうで、光栄に思います。社内での講演会ですので、ほかの方は参加できませんが、足並みを揃えることが求められる組織の中で、「やりたいことを自由にできた理由は何か?」というのがテーマになりました。新米の頃、清華大学で週一回の会話授業で、テーマを『清華大学の先生』にして、毎回学生たちに短文を書いてもらい、それを教壇に立って発表してもらっていた時のことを思い出します。

以下は学生が書いた短文の一例です。

・王先生の文法説明はとても詳しくわかりやすいです。
・王先生はおしゃれなので、先生を見ているだけで楽しい気分になります。
・王先生は、例を挙げて説明してくださるのでイメージがわきやすいです。
・例文が面白いので、授業中笑いながら覚えることができます。
・わたしの点数が高い時に、みんなの前で褒めてくださったのでやる気が出ました。

以下は、お笑い芸人時代の思考パターンを使った発表づくりです。
毎週会話授業で発表をしてもらっていましたが、手順は以下の通りです。

① もともと日本語に興味がなかった(ネガティブな状況)
・日本語学習を始める前の不安
・日本語学習を始めたときの困難
これで1週目の簡単な短文つくりと40〜60秒程度の発表ができます。

② 王先生との出会い(ポジティブな現実)
王先生の授業の良いところ
王先生の魅力
これで2週目の簡単な短文つくりと40〜60秒程度の発表ができます。

③ 王先生の授業を踏まえ、未来へ(明るい未来と将来の目標)
どのレベルを目標にするか
将来、どんなことをしたいか
王先生への感謝のメッセージ
これで3週目の簡単な短文つくりと40〜60秒程度の発表ができます。

①②③をそれぞれ1週間かけてゆっくり進め、4週間後にまとまった作文内容をみんなの前で音読してもらいました。事前に学生たちには5週間目までに作文内容を暗記してもらい、パワポを使って、クラスメイトの前でプレゼンテーションしてもらうことを伝えました。

2週目に学生が書いた短文を集めて、まとめて王先生に見てもらうと、先生は大変喜ばれました。翌週も学生たちから王先生への感謝のメッセージを見てもらいました。「五週目に王先生についての特別発表会があるので見学に来てください」とお知らせすると、先生はその日見学にいらっしゃり、発表会の最後に、総評として、学生たちの日本語発表を心から褒めていらっしゃいました。

わたしが「異質」な授業をしていて、周りと足並みをそろえた授業をしていなくても、王先生は、その後、わたしの授業のやり方に攻撃を加えることはありませんでした。

各学年の授業1学期につき2人の先生をテーマに学生たちに発表してもらい、特別発表会ではその先生に見学に来てもらいました。もしシンポジウムなどのイベントで発表会を見学できない場合は、学生たちが落ち込まないように、「録画して、○先生に見せるから、元気に発表しよう!」と言って、まずはカメラに向かって「○先生、僕の発表を見てください!」と大声で話してもらってから発表してもらいました。録画したものをDVDに焼いて、その先生にプレゼントしました。その後、どの先生とも自然と話ができて、時々食事もしました。1年後には日本語学科のすべての先生と仲良くなりました。学生たちも担当の先生と仲良くなり、ほかの先生方も楽しく授業をされるようになったそうです。「異物」である私は、周りから攻撃を受けることなく、同僚の先生から認めてもらえるようになりました。

【ここで、作文コンクールの宣伝をさせてください】
大森先生の最後の日本語作文コンクールですが、できるだけ多くの皆さんに参加してもらいたいと思っています。拡散をお願いいたします!

大森先生は学生たちが無料で応募できるこの作文コンクールに全財産を注ぎ込まれました。入選された方々の中には、すでに大学の教授として、日本語を教えていらっしゃるベテラン教師もいます。入選されなかった方々も「学生時代、日本語作文コンクールに毎年作文を送っていた」という事実は変わりません。学生時代、私も一度だけ無料で行ける海外留学のチャンスを掴もうと英語面接に挑戦したことがあります。残念ながら落ちてしまいましたが、その時の自分のチャレンジ精神に誇りを感じています。「これからもチャレンジして行こう!」と思った時、若く、実力がなかったあの時に、失敗を恐れずチャレンジした勇気に、今も励まされます。

「日本語学習歴3ヶ月では作文は書けない」という偏見を捨て、「50音が書けたら、そこから先は、どのタイミングでも作文が書ける!」と思ってもらいたいです。作文の書き方がわからないなら、先ほど私が説明した『テーマ:清華大学の先生』の部分を振り返ってみてください!

https://www.nihonwosiru.jp/oshirase/202211_02.php
この応募要項には、後援名義に『文部科学省』『福島県』の名がありませんが、ホームページが更新されましたら、すでに認定をいただいた『文部科学省』『福島県』も記載される予定です。また、文化庁が認定する条件をようやく満たしましたので、ただ今、後援名義を『文化庁』にも申請しているところです。

さて、話はもとに戻りますが、足並みを揃えることが求められる組織の中で、「やりたいことを自由にできた理由は何か?」というお話がありました。

昨夏、復興庁イベントで、23名の中国人大学生が福島県の被災地を訪問し、地元の人たちと交流をしました。復興庁の担当者の方が、昨年末、「この1年を通して1番素晴らしいイベントだった」とおっしゃいました。

復興庁の皆さんから見れば、私はどこの馬の骨とも知れない人間だったでしょうし、「異物」だったと思います。福島震災地ツアーの最後の最後に私の得意な発表会があったのですが、それまでは、復興庁、企業、学生、地元の皆さん、メディアの皆さんが作るチームの1つの小さなピースとして、感情を捨て、一人一人に声をかけ、走り回る日々でした。発表会本番では学生たちは力を込めた情熱的なスピーチをしてくれましたし、復興庁の皆さんも涙が出るほど嬉しかったとおっしゃいました。中国政府系メディアも初めて福島の復興についてポジティブなところを取り上げてくだいました。それが理由で、大森先生の作文コンクールを、次回から、復興庁さんが引き継ぎ、主催してくださることになりました。作文担当はわたしが致しますので、5月にはこちらの作文コンクールのお知らせもできるかと思います。これからもよろしくお願いいたします。

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