最初の同僚の先生だった駒澤千鶴先生は、ものすごいエネルギーとスキルの持ち主で、情熱の塊でした。エピソードは枚挙にいとまがない方でしたが、中でも、先生のスキルに魅了されました。考えてみると、プロのサッカー選手が子供の頃、バルサアカデミーキャンプでサッカーを学ぶのと、私たちが学校の体育の時間にサッカーを学ぶのとでは、雲泥の差があるのは当然です。私は直感で、「これだ!」と思いました。
当時は北京オリンピック前だったこともあり、NHKアナウンサー出身の方が北京大学に留学に来ていました。それで、教え子がスピーチ大会に出場する直前に「仕上げはアナウンサーさん!」という感じで指導していただいたのですが、毎回美しい仕上げにしてくださいました。
それから、落語家さんの一席をお聞きした後、教え子たちと一緒に落語家さんと食事する機会がありました。そこで、「どうしたらそんなに流暢に話せますか?」とお聞きしたところ、「早口でなくて良いから、息が続くところまでずっと話し続ける練習をしたらできるようになるよ」とアドバイスしてくださいました。その場で全員で練習して、その1週間後には全員がマスターできていました。「日本人のように話したい!」だった目標が、「プロの職人の技をマスターしたい」に変わった瞬間です。
時々、「笈川さんの授業は特別ですね」と言われますが、日本語教師としてのキャリアを、「上手に話す職人」から学ばせていただいたことが大きいです。ですから、上手に話せるようになるまでの過程での苦労や失敗例も人一倍経験していますし、失敗してもうろたえない図々しさがあると思います。学生が指示通りにやってくれないとか、ちゃんと発言してくれないとか、多くの先生方がいま悩んでいる問題は、すでに解決できたので、同じ状況に陥ってもうろたえることはないのだと思います。
マレーシア日本語教育国際研究発表会から証明書をいただきました。近々、実際にマレーシアへ行って授業をしたいです。
https://www.youtube.com/watch?v=YUNKWFK8OVk&t=2s