この2年で、たくさんのセミナーに招待していただきました。そこでは、毎回受講される先生方の悩みがシェアされます。主な悩みは「自分が受けてきた語学授業(英語)が役に立たなかったので、自分が日本語教師になった時に、役に立たない授業をしてしまう」「ゴミの山に野菜の種を植えても野菜は育たない」といった悩みでした。その例えを聞いて動揺が隠せず、最初は慌ててしまいました。しかし、文部科学省をはじめ、教育界のトップの方々も、ずっと前から、クリエイティブな人材育成を目指すなら以前のやり方は合わないと感じていたらしく、実際に教育現場を覗いてみると、私たちが受けてきた授業と今の小中学校の授業では、あらゆる面で違いが見られます。日本語学校における授業も、受講されるある先生がおっしゃるような極端にひどいところはまだ見たことがありません。準備をしっかりされていて、細かい工夫をたくさんされている先生方がたくさんいらっしゃいます。
前回の投稿にも書きましたが、学習者が求める日本語教師像は「自分を上達させてくれる教師」「間違いを厳しく指摘して自分のメンツを潰さず、ちょっとでも良いところを褒めてくれて、いつもやさしくしてくれる教師」「楽しい授業をしながらも自分を上達させてくれて、同時に刺激もたくさん与えてくれて、化学反応によって新しい自分に変えてくれる教師」といったものでしたが、教師もそうしたい気持ちは山々です。厄介なのは、「ゴミの山に種を植えても育たないからどうしたら良いのかしら?」という悩みです。全とっかえすれば良いとわかっていても、ゴミを処理しなければいけないと分かっていても、ゴミ屋敷のゴミを外に出せない人たちと同じように、面倒くさくて処理する勇気が持てず、余計なことを考えたくないのです。
ChatGPTが自分より上手に説明できると分かっていても、ユーチューバーがわかりやすく、しかも面白おかしく説明していることが分かっていても、そんなの見たくもないし、聞きたくもないのです。衰退していき、自分が淘汰されてしまうと分かっていても、相変わらずその他大勢と同じレール上で勝負してしまう…。これって、まさに私が売れない芸人時代に、お笑いライブの舞台上で日々感じていたことです。
ところで、「専門家の先生にどうすれば学生が上手になるかを聞くと、日本語教育界で流行した過去のメソッドについての説明を丁寧にされますが、そのメソッドをどう活用すれば高い効果が得られるかを説明してくれる先生がいません」といった悩みも聞きます。野球で言えば、「バットを振ればヒットが打てる」という説明は得られても、「3割打てる方法、4割打てる方法を教えてくれる人がいない!」というのが、多くの日本語教師の悩みだそうです。
私はアニメ『スラムダンク』で言えば、破天荒な桜木花道タイプです。令和の時代に桜木花道は合わない。だから最近の『スラムダンク』の主人公は、令和の時代にぴったりの宮城リョータなのだと思います。今悩み苦しみながらも、ゴミ山を全とっかえしようとする先生方と同じように、私自身も桜木花道を全とっかえして、宮城リョータを目指したいと思っています。