イベント情報

福島県南相馬市日本語教育講演会

講義形式の授業を聞くことほど楽なものはありません。自分がどれほど聞いているかを判定する試験があるわけでもないので、聞いているふりをして、心を休ませることができます。心を休ませながらも、周りに「やっているアピール」ができます。ノーリスク・ハイリターンでメリットは大きいです。

私は自分が一生懸命に勉強したことを専門家の先生が説明する動画を見るのが好きです。頭を使わなくても楽しめるからです。たまに知らなかったことが出てくると、ワクワクします。そして、「ああ、これは知っていた!」と確認するだけの作業にも関わらず、なんだか自分の頭が良くなったような錯覚もできて、最高の気分になります。

でも、まったく興味のない動画を見ると、全然ワクワクしないので、話術の秀でた先生の動画でない限り、1分も我慢できません。

昨日の午前中は、大会の出場者のほか、南相馬市が無料で提供している日本語教室に通う外国人学習者のみなさん、ボランティアとして、この取り組みに参加してくださっている先生方向けに、わたしもスピーチをしました。対面で、スピーチについてスピーチするのは、本当に久しぶりのことでした。

私が話す内容は、皆さんからすると、知識ゼロ、初耳のことばかりですので、話術に力を入れなければ1分も我慢できないだろうことは想定の範囲内です。なんとかワクワクしてもらいたいと思って、例え話に力を入れます。そこで役立つのが、お笑い芸人なら誰でも考える「あるあるネタ」です。ここを工夫しないとついてきてもらえません。でも、昨日は環境に助けられました。

福島県の浜通りには日本語学校がありません。「自分の話す日本語の文法や発音の問題を指摘されたことがない!」というメリットもあって、わたしに話しかけてくる外国人の若者たちがたくさんいました。ボランティアのみなさんが、褒めて育てるスタイルで、外国人の若者たちに、やる気と勇気を持たせていたのです。

そういえば、私は、北京にいたときより、地方に行ったときのほうが、よく現地の人たちに褒められました。「あなたの中国語はわたしよりずっと上手だ」と言われ、自信がついたものです。うれしくなり、どんどん話したので、話せる話題が増えました。わたしの話を聞く相手の「まあ、上手ね!」という表情が見えると、こっちの表情や声や息遣いまで元気になるのを感じました。

結局、語学は、放課後自分で予習復習をするかしないかで、上達のスピードが変わってきますし、バイトなど、放課後の経験で知識量も変わってくるので、日本語教師は、授業中に、学生たちの気持ちを盛り上げ、放課後、予習復習をしてもらう工夫をすることに専念したいものです。

なかには、「自分の文法や発音の問題点を指摘されなければやる気が出ません!」と主張する学生もいます。でも、そんなときは、一回だけ、授業中にフィードバックのルールを変えて、ほかの学生にはこれまで通り、よかった点を3点挙げて褒めまくり、「わたしには指摘を!」と主張する学生だけに、周りが「あなたの話す日本語は、文法に問題がありました。意味が理解できなかったので、しっかり文法の勉強をしてきてください」「あなたの発音のクセが強すぎて、意味がわかりませんでした。次はもっと発音に気をつけて話してください。以上です」と言うと、自分への指摘を求めていた学生も満足したのか、次からは、かえって他人へのフィードバックがやさしくなり、心をこめて話すようになりました。嫌いな人から嫌味を言われたら反骨精神が発揮されるかもしれませんが、仲間から急に言われたくないことを言われたら調子が狂うのかもしれません。

おっと、もうすぐ内定者研修が始まるので、今日はここまでにします!とにかく、昨日の講演会をやってみて、考えさせられることがたくさんありました。

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