最初は自分の感覚だけで発音やスピーチの指導をしていたのですが、18年前に東京外大の鮎澤孝子先生の研究室を訪問してからは、発音アクセント教材がびっしり詰まった段ボール箱を毎月北京に送っていただき、鮎澤先生曰く「最新の発音アクセント教材」を使って学生たちと毎日練習していたところ、わたしも学生たちも、アクセントのルールを自然と覚えることができました。そのおかげで1回目から教え子たちの「鰯テスト」の平均点が99点で、ほとんどの学生が100点でした。いま思えば、貴重な経験だったとわかりますが、当時は無我夢中で、それが特別な体験だったことをわかっていませんでした。ただ、その後、根拠を示さないと指導を受け入れられないような優秀な学生にも指導ができたのは大きいです。
さて、正しいアクセントやルールを知るというのは、発音指導をするときに、羅針盤を持って航海するようなものです。学生への指導に関しては、学生に自信を持ってもらう工夫も声がけの工夫も、こちらがご機嫌で明るく振る舞うことも大事ですが、羅針盤があれば、嵐に巻き込まれたときに動揺せずに済むので、精神上、かなり楽でした。
今回戸田アカデミー主催の模擬授業では発音指導をする機会を作っていただきました。コロナ以降、日本や海外にいる日本語教師向けにオンライン研修をさせていただいていますが、以前はスピーチやプレゼン指導、発音指導に興味のある日本語教師はいないと思っていた(時代もあるのでしょうけど、「発音やアクセントを学生に教えても意味ないよ!」と言われていた)ので、発音指導法を学びたいという先生が意外と多いことに驚き、羅針盤が使えることに喜びを感じています。
今週末もイベントがあります。使用教材は違いますが、一発勝負の機会、本番に向けてしっかり準備します。