
模擬授業で、学生たちと向き合うときに、大切にしている練習があります。
瞬発力。瞬発力こそ、言葉の生きた力を育てる第一歩だと思っています。最初のころ、学生たちは「答え」だけを言うこともあれば、「理由」まで言うこともありました。ある日は「理由とエピソード」まで語り、話の長さも内容も毎回ばらばらでした。
「理由は2つでいいんじゃない?」
その瞬間、生まれたのが「理由は2つあります。どうぞ聞いてください。」という一言でした。しかし、2つの理由だけでは20秒で終わってしまいます。そこで、
「エピソードを話そう。思いつかないなら、『昨日!』と言い始めてみよう。」
“昨日”と口にした瞬間、物語が動き出します。どこで、誰と、何をしたのか、どんな気持ちだったのか。言葉が勝手に動き出します。
学生たちはお笑い芸人ではないので、無理に“すべらない話”をする必要などありません。それよりも、人の優しさが伝わる話―おじいさん、おばあさん、子ども、友人との温かい思い出が、心に残るスピーチになります。
面接試験でも同じです。
「昨日、こんな素晴らしい経験をしました。」
そう話してくれたとき、私たち日本人は思います。「ああ、この人と心が通じ合える」と。
もちろん、私たち日本人も、外国人の方々に寄り添う努力を忘れてはいけません。そして、日本に住む外国人が、日本の文化を理解し、受け入れようとしてくれたとき、私たちは安心し、そして心から嬉しくなるのです。
「答え・理由・エピソード」を話すことを通して、思いやり・社会のルール・共通の価値を、日本語で語り、「あまり理解できない」と感じたところにも寄り添う訓練ができます。
これまで、努力の成果は、コンテストの結果にも表れましたが、それ以上に、学生たちがスピーチの練習を通して、“優しさと言葉の力”を身につけてくれました。
最後に、焼肉をお腹いっぱいいただき、ありがとうございました

どんな偉そうな人が来るのだろうと、みな緊張した面持ちでお迎えしてくださったそうですが、威厳はゼロ。無事、威圧しながらダメ出しすることもなく、模擬授業と教師向けセミナーを終えました。