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日本語スピーチ判定アプリについての質問より。③

昨日の続き
人の名前を覚えるのが大の苦手です。
ただ、最初の就職が議員秘書でした。
ある日、何百人もの名前や職業、人柄をすらすらと言い当てる代議士に尋ねました。
「先生は、どうしてそんなに多くの人の名前を覚えられるのですか?」
代議士は笑って、こう答えました。
「それは、大切だと思っているからだよ。」と。
その瞬間、固まりました。
まるで「あなたは人を大切にしていない」と言われたようで、
心臓が凍りつきました。
その日、「人を大切に思うこと」が、
名前を覚える第一歩だと考えるようになりました。
専門学校では、毎週512名の学生の授業を担当していました。
通勤バスの中、学生の顔写真付きファイルを開き、
受験英単語を覚えるように一人ひとりの名前を10回ずつ声に出して覚えました。
休み時間になると、廊下を駆け抜ける女子学生たちに向かって、
「陳さん、王さん、郭さん、おはよう!」と声をかけました。
すると彼女たちは急ブレーキをかけ、
「キャー!」と叫びながら笑いました。
その反応がうれしく、疲れも吹き飛びました。
さて、ポジティブフィードバックは、
今に始まったことではありません。
一つ、恥ずかしいエピソードですが、
どうぞ聞いてください。
当時、ある女子学生に私はこう言ったそうです。
「あなたの日本語は、日本人より上手ですね。」と。
実は、その一言を自分でも覚えていません。
専門学校に通っていたその女子学生は、
5年後、北京大学成年教育学院に合格しました。
キャンパスで再会したとき、私は聞きました。
「どうしてそんなに頑張れたの?」と。
彼女は少し照れながら答えました。
「先生が“日本人より上手”って言ってくれたからです。
その言葉が、今でも耳に残っています。
シャワーを浴びるときも、散歩をしているときも、
枕に頭をつけるときも。」
嫌なことを言われたら、
きっと私たちはいつまでも覚えているでしょう。
励ましの言葉だって、人は覚えてくれているかもしれません。
ただ、ポジティブフィードバックには、注意すべき面があります。
多くの学生が「幸せを感じます」と言って、自信をつけてくれましたが
「周りのレベルが上がるのは困る」と感じてしまう学生も一定数います。
一応、ある“実験”からこんな結果を得ました。
ポジティブフィードバックを徹底した結果、
これまでスピーチ大会で優勝したことのなかった大学の学生が、
初めて栄冠を手にしました(北京市22校中、常勝校3校を除く大学)。
また、いわゆる“二本大学”の学生が、
努力を重ね、超一流大学の大学院へと進学することができました。
可能性を信じ、声をかけること。
そのことを、512名の名前を覚えた日々から学びました。
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