以前は、学校の先生から「この文章を読んでどう思いましたか?」などと質問されたときに、ほとんどの生徒が「あっ、すごかったです」「あっ、怖かったです」など、簡単なひとことだけで回答するか、「あっ、わかりません」と恥ずかしそうに答えるかのどちらかだったそうです。
いま、生徒たちは積極的に練習に参加してくれています。蚊が鳴くような小さな声だったのですが、だんだん声も出るようになりました。教育委員会の皆さんが、なぜやる気満々なのかを生徒たちに尋ねたところ、「自分もできると思ったから」という理由が大きかったそうです。
生徒たちの話では、スピーチ倶楽部に参加してから「学校の先生に指名されるのが怖くなくなった」という声がもっとも多かったそうです。「一ヶ月練習して、変化はそれくらいしかないの?」という見方もあるかもしれませんが、自信をつけるまでに時間はかかるものです。スピーチの指導をしていて、最も効果があり、評価を受けやすいのは、表現や表情の変化で、ビフォー・アフターがはっきりします。しかし、実は、仕上げに1日もかかりません。
スピーチ倶楽部では、中国人学習者向けに作った『発表の型』『回答の型』『フィードバックの型』の教材を使って練習しています。
生徒たちはもともと文章にも会話文にも新聞記事にも興味がなかったそうです。字を読むことに興味がなく、自分とは関係もなく、勉強・学問はつまらないもの!という常識が、生徒たちの間にできあがっていたというのです。本当は、勉強って、スマホゲームやテレビゲームよりも面白く、ただ面白いことをやっているだけで、大人からの評判がよくなり、同級生からも尊重してもらえます。もちろん、成績の良い一部の生徒は周りを馬鹿にして、コミュニケーション機会を逃し続け、コミュ障のまま社会に出て苦労をするそうですが、勉強の面白さを知ったもの同士が励まし合えば、明るい未来が待っていると思います。生徒たちは、文章を読み、自分の意見や感想が言えて、理由も自分のエピソードも交えて言えるようになったので、やっと「読むこと」に興味を持つようになったそうです。