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大目に見ることより大事なことはない

学生の文法や語彙、アクセントなどの誤りに気づかないふりをするのも教師の気づかいですし、正直なところを聞かれても、ぶっちゃけないで、気づかないふりをやり通すのも教師の気づかいだと思います。これは子どもに対する親の気づかいでもありますし、親に対する子どもの気づかいでもありますし、友に対する気づかいでもあれば、恋人・配偶者に対する気づかいでもあって、相手の間違いに気づかないふりをして、相手を責めずに自分がご機嫌でいることってほんとうに大事だと思います。だって、他人は間違いなく、自分を大目に見てくれているのですから。

人に感謝したり感謝されたり、人を褒めたり人に褒められたりしながら忙しい日々を送っていると、精神上かなり楽になります。「人からの評価は気にしないよ」と言いながらも人から評価してもらいたいし、褒められたいと内心思っているなら、他人の粗探しの反対、つまり、他人の褒めどころ探しをいっぱいして、自分が誰かに褒められるより10倍くらい他人を褒めたら良いと思います。他人の良いところを瞬時に10個くらい挙げられる頃には、「たしかに、人からの評価は気になるよね」などと言って、相手に共感しながらも、実際は、人の評価はそれほど気にならなくなるものです。

日本語教師研修二日目が終わりました。

大勢の先生方の前で、数名の先生に手伝っていただき、前の発表者の良かったところを3つ褒めてから自分の課題に取り掛かってもらいました。でも、どの先生も、なかなか褒め言葉が出てきませんでした。3つ絞り出すまでに、聞き手が白けてしまうくらい沈黙の時間が流れました。

これほど多くの先生が夏休みの忙しい中、五夜連続で研修を受けるということは、普段の授業で相当苦しんでいるからだと思います。学生への不満の声を挙げたら何十何百と出てくるでしょう。だから苦しむのだと思います。教室の雰囲気を変えるのは、実はそれほど難しいことではありません。例えば、教師が一人の学生を指名し、発言してもらい、学生の発言を聞きながら教師が大笑いして、「ははは!面白い!王さん、すごい!」と叫ぶだけで、それまで授業に集中できなかったほとんどの学生がこっちを向いてくれます。教師が常に上機嫌なら、学生はどのタイミングでも笑ってくれます。笑うということは、授業に集中しているということです。

「前の発表者の良いところを3つ褒める」という課題ですが、最初は時間がかかりました。でも、二巡目、三巡目には言葉がすんなり出てきます。そんなものです。それでも、言葉に心が乗っていないのがわかります。理由は、どの先生も、そこがほんとうに良いところだとは思っていなくて、私から指示され、仕方なく言っているからだと思います。

褒め言葉がすぐに出てこない教師は、普段学生の悪いところばかりに注目してしまい、その流れで、自然と出来上がった厳しい表情が原因で、学生たちのモチベーションが上がらないとはつゆ知らず、「環境が悪い!」「学生がハズレだ!」「人生なんてそんなものか!」などと考えはじめ、悪循環からも苦しみからも逃れられなくなります。

こんな話をよく聞きませんか?小さな我が子がものを盗んでしまった時に、怒らず、ぎゅっと抱きしめて、小声で「これはだめなんだよ」といったほうが、叱るより効果があるって。

他人の悪いところに気づかないふりができて、「正直どう?」と聞かれても、ぶっちゃけることなく、気づかないふりをやりきることが大事だと思いますし、もし、自分が気づかないふりをしていることに限界を感じたら、「でも、そういう問題って、自分にもあるし、誰にでもあると思いし、辛いよね」などと言って、学生に寄り添い、共感し、相手を責めないこと。「信じられない!ありえない!」と叫ぶのは気持ちが良いかもしれませんが、口癖になりやすいですし、気をつけないといけません。

とにかく、他人の良いところを瞬時にたくさん挙げられて、いつも学生たちの笑顔を見ながら自分も笑顔でいると、少なくとも教室での今の悩みのほとんどが消えてゆくと思います。

研修二日目の写真です。前回と比べたら、パッと明るくなった感じがします。

 

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