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中国日本語教師研修

子供の頃、よく友達から言われたのは「先生は子供の頃から成績が良かったから、成績の悪い子供の気持ちがわからない」といった話です。自分が日本語教師になり、発音・アクセント指導が自分の武器だと考えるようになってから、「それが苦手だという先生の気持ちを理解し、ちゃんと寄り添っているか?」と聞かれたら、客観的にできているかどうかはわかりませんが、自分が苦手なことをしているときのモードに切り替えるようにしています。それでもできていない部分が多々あるとは思うのですが……。

さて、同業者(日本語教師)から現場の悩みを伺う機会がひっきりなしにあります。「授業についてこれない学生をあきらめたいと思ったことはないのか?」「学生たちが練習を長続きさせられないことに無力感を感じることはないのか?」といったものが断然多く、中国に至っては「勉強する学生がいないから、中日(日中)の未来を担う人材は今後現れないだろう」などといった絶望感を吐露する先生もいらっしゃいます。来月、中国人の先生を対象に教師研修をする予定です。

コロナ以降、この二年間は内定者研修を担当していて、各国の大学生たちに授業をしています。もちろん、日本語力の差はあるのですが、私も気にしませんし、学生たちも気にしていないと思います。人それぞれ長所があり、例えば、少したどたどしい日本語でも、自分の言葉で「世界ロボコンコンテストで優勝しました」などと言えば、周りは自分を尊重してくれるようになります。つまり、その人の素晴らしさを知れば、日本語力の差に劣等感を抱く必要がなくなるというわけです。小学生のスピーチ部の一人は、短距離走が得意で、県大会にも出るくらい足が速いのですが、なぜか発言時の声が、びっくりするほど小さく・蚊が鳴くような声しか出せませんでした。しかし、毎週発表会のたびに、司会者が彼女の日頃の努力や徒競走の抜群な成績について紹介すると、声が出せるようになりました。私も彼女を指名をする時には、彼女の日々の努力の話を添えるようにしています。最近は、ためらわずに発言してもらえるようになりました。

「学生たちが上達する根拠はどこにありますか?」といった質問を受けることがありますが、私は研究者ではないので、根拠を提示するのは難しいのですが、これまで20年間やってきて、学生たちが互いに尊重し、互いを知ろうとすることで、切磋琢磨できる雰囲気が出来上がる傾向にあることはわかっています。私もできるだけ学生のことを知ろうとし、尊重しようとしますが、これって、「モテる男のコツ」「モテる女のコツ」と似ていますよね。

教師が自分の不機嫌を教室に持ち込まなければ、学生たちは心の負担を感じませんし、明るい未来を語れば教室の雰囲気は良くなります。ネガティブな反論を感情的に否定せず、反論してきた学生に笑顔で「あなたなら大丈夫」と言い切ること。発音が悪い、語彙が少ないなど、学生の悩みや問題を聞いても、「そんなの大したことはない。大丈夫だ!」と笑顔で言い切ることが大事だと思います。

さて、オチになりますが、「理想は15名前後!もし多くなったらやり方を変えます!」と伝えておいたところ、応募者が150名になったそうです。帰国して一年、はっきりものを言わなくなったせいで、ちょっと苦労しそうですが、日本語教師研修では、頑張って、明るい未来を語りたいと思います。

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