「日本語アクセントなんて気にしなくても良い」という人もいますし、「大事だ」という人もいます。その両方の意見にしたがって、両方ともやってみましたが、最終的には、「正しいアクセントで暗記した方が、暗記しやすかった」ので、私は、アクセントを気にするようになりました。
初めてスピーチ指導をした際には、まず、学生に音読してもらいました。3分間のテーマスピーチだったので、文字にすると900字くらい。その中で、私が変だと感じた学生の発音と間違ったアクセントを、全部で100個くらい指摘しました。その1つ1つを取り上げ、私は3回ずつ読み上げ、録音したものを学生に渡し、次の日、また音読してもらいました。すると、私が変だと感じた学生の発音と間違ったアクセントが70個くらいまで減っていました。
それを見たある方が「あんなに熱心に指導したのに、全然ダメだ」とおっしゃいました。もしかしたら、その方は、教師が熱心に指導すれば、100個の問題が翌日には0になると思ったのかもしれません。その方は呆れてその場を離れましたが、その日、私もその学生もその言葉を気にせず、何度も音読練習をしました。まるで、『アリとキリギリス』に出てくるアリのように…。その日は、最終的に問題点が50個まで減りました。その日、私は問題のある発音・アクセント1つ1つを取り上げ、3回ずつ読み上げ、録音したものを学生に渡し、次の日、また音読してもらいました。すると、翌日には、問題点が30個まで減っていました。かなり上達したので、私は喜んでいましたが、その学生はもどかしく思っていたようです。また、前日見に来たその方は、今度は、「語学センスのない学生に熱心に指導しても意味がない」とおっしゃって、その場から離れ、次の日からは見に来ませんでした。私と学生は、『アリとキリギリス』に出てくるアリのように本格的にコツコツ練習し始めました。1週間前に100個あった問題も、2、3個まで減ると、誰もがその変化に気づき、驚きます。徐々に問題解決に成功した学生は、自信を持ち始め、声量も増して来ました。発音・アクセントの問題を解決した後、スピーチ練習をし始めました。自然な表情ができていなかったからです。それに、10段階で言えば、1の声量からスピーチし始めたり、10の声量からスピーチし始めたり、1の声量から10の声量に突然声量を上げたりするのを見て、山積みの問題を1つ1つ対処するのは難しいと感じました。「今日の練習では、声量は6から始めようか!」と言っても、6がどれかわからないので、2で始めたり、9で始めたりしました。まず、基準を知るところからやらないと、何も始まらなかったのです。
以上の複雑な問題から、学生への指導は難しく、結局は語学センスがあり、教師の言うことを素直に聞ける一部の学生だけが、教室の中で伸びていくのだと思います。しかし、問題点を我慢強く、少しずつ減らすため、励まし続ける膨大なエネルギーが教師側にあれば、問題点は、少しずつ減っていきますし、学生が日本語を話す能力を身につけるための「基準」をうまく学生に伝えることができる教師は、全員とは言わないまでも、教室にいるほとんどの学生を上達させることができると思います。