てっちゃん先生のヴォイシーでお話をしてきました。
https://voicy.jp/channel/3209/568395
すでに帰国してきたことをお伝えしていなかったので、中国在住と紹介されましたが気にしないで二番目からお聞きください(笑)
新米教師だった頃、私はいたるところで日本語授業を見学させてもらっていました。話し上手の先生もいましたし、個性もそれぞれでしたが、少なくともスタイルはだいたい同じでした。「教え方」を研究する先生はいましたが、「学び方」を研究して実践している先生にはお目にかかれませんでした。同時通訳など語学レベルの高い人ほど、「語学習得は、独学(自学)以外にあり得ない!」とおっしゃっていたので、私は「学び方」を学びたいと思っていました。
今、私の授業を見学されるほとんどの先生は、「このような授業を初めて見ました」とおっしゃいます。私は、清華大学と北京大学で10年間教鞭をとっていた時に、面白くて役立つ学習方法を学生たちに教えてもらっていました。今、その「学習方法」を使って授業をしているので、多くの先生は、「ああ、新しい!特別だ!」と思われるかもしれません。毎朝、教え子たちと一緒に散歩をしながら、いつも学生たちにインタビューをしていました。スピーチコンテストが近づくと、毎日教え子と3時間歩いていました。もちろんスピーチ練習もしますが(歩きながらスピーチをすると勝手にリズムが良くなる)ほとんどの場合、私がその学生から学習方法を聞き出していました。もちろん、面白くて役に立つ方法も一つ一つは万能ではありませんが、その数が数百数千となると、私と相性が悪い学生も上達します。
中には、「学生の発言に『いいでした』『素晴らしいでした』『いいだからです』といった文法の間違いがあったのに、なぜスルーされたのですか?」と質問する先生もいますが、「間違いをスルーするのが我々教師の役割で、学生の間違いをクラスメイトの前で指摘して、その学生のメンツを潰して、やる気の芽を潰すのが、私たちの役割ではないと思うからです」と答えたことがあります。もちろん、これは本当のことで、教師にミスを指摘され、自分のメンツが潰されるのが怖くなり、学生たちはだんだん発言しなくなりますが、教師は学生のためを思って、あえてミスを指摘します。そこに意地悪な心はありません。しかし、その結果、クラスの過半数の学生は学期の終わりにはやる気を失っているのです。
教師研修に参加される多くの教師が知りたいのは、なぜ自分の学生がやる気を出してくれないのか?ということらしく、研修の際に毎回同じ質問が出ます。しかし、もし本当のことを話せば、今後は教師がやる気をなくしてしまいます。多くの先生は、「これまで長年頑張ってきた自分が完全否定された気持ちになる!」とおっしゃいます。でも、本当は、上からの圧力で仕方なくやらされていたことを、長く我慢しながらやってきた自分が否定されるので、苦しくなるのだと思います。
二刀流の大谷翔平選手が仮にプロでうまくいかなかったとしても、自分で納得した上でやったことでしょうから、もし結果が出ず、周りから否定された時に、「ああ、俺はみんなに完全否定された!悲しいよー!」と言って、悔し涙を流すでしょうか。
もう一つ、「もし笈川先生よりもっと上手に教えられる先生がいて、笈川先生が否定されたら苦しくなりませんか?」と聞かれることがあります。もしもっと良い方法があって、学生をもっと上手にできる先生がいらっしゃるなら、私は今のやり方を全とっ替えします。そして、新しいやり方をマスターすると思います。なぜなら、目的は、自分の正しさを主張することではなく、学習者にとってよりより方法を提供することだからです。もしこれを目的にするなら、心配事はなくなります。効かない薬をやめるだけですから、上からの圧力で仕方なくやるのを我慢しないで、学習者のことを大切にしている場所に移れば良いと思います。実はそのような場所は少なくないですし、これからますます増えていきますから、心配しないでくださいね。