ある日本語学校の授業では、文法を正しく説明して、教科書どおりに進めることが、とても大事にされています。先生には、専門職の振る舞いが求められているからです。そのため、先生がずっと説明して、学習者は「分かった気」になりますが、話せず、自信もつかないということが起きます。
先生は、「ちゃんと説明しているのに、学習者たちはできるようにならない…」と悩み、学習者は、「ちゃんと勉強しているのに、話せない…」と悩みます。そして、先生は、もっと上手に説明しようとがんばって、学習者は、もっと真面目に勉強しようとがんばります。その結果、先生が疲弊しながらも頑張って準備したのに、教室がもっとしずかになり、もっと手が上がらなくなり、話そうとする学習者がもっといなくなります。
先生も学習者も、いっしょに苦しくなっています。問題は先生が専門職の振る舞いをして、学習者たちが萎縮するしくみにあります。だから、だれかが悪いわけでも、だれかの力が足りないわけでもありませんよ。