授業の最初に、ベトナム語で「ベトナム料理は美味しいです!ベトナム人はやさしいです!」と言ったら、僕も、ベトナム人の彼らも良い気分になったよ。
今日は、「文法の正しさ」と「好感度の高さ」は一致しないというお話をするね。
僕たちは、「文法が正しい=正解!良い回答!」と考えがちだけど、文法が完璧でも相手を不快にしてしまうこともあるんだよ。今日は、「すきな和食(日本料理)はなんですか?」という質問を例に、多くの日本人が嫌がる“文法完璧回答”の5つのタイプをご紹介するよ。
① 否定から入って空気を冷やすタイプ
「和食(日本料理)は嫌いです。私の好みではありません。」
相手は「そう言われると続けにくいなあ…」と感じてしまうよ。
② 相手の文化を軽く否定するタイプ
「和食(日本料理)は味が単調で、魅力を感じません。」
日本文化を“雑に否定した”ように聞こえるから、失礼な印象を与えてしまうんだ。
③ 論文のように理屈で押し切るタイプ
「栄養バランスを考えると、我が国の料理のほうが優れています。」
論理的だけど、冷たく感じられるよね。日常会話に“学術的な勝ち負け”を持ち込むと、相手は距離を感じてしまうよ。
④ 質問の意図を“つまらない”と切り捨てるタイプ
「特に好きな和食(日本料理)はございません。お答えする必要性も感じません。」
会話がしにくくなるね。
⑤ マウントを取られたように聞こえるタイプ
「和食(日本料理)はレベルが低いとは言いませんが、我が国の料理の質は高いです。」
相手を下げて自分の文化を上げると、嫌われやすくなるから気をつけたいね。
では逆に、文法的、日本語的にはハテナ?だけど、多くの日本人がほっこりする回答をご紹介するね。
① 空気を温かくする回答
「和食(日本料理)、昨日、食べる。にほんの心、感じる。」
② 相手の文化を大切にする回答
「にほんの味、やさしい。にほんの味、友だち味。」
③ 理屈より気持ちで伝える回答
「にほん、ごはん、昨日、食べる。こころ、あたたかい。からだ、げんき。」
④ 質問を大切に受けとめる回答
「しらないにほんのごはん、いっぱい。ごめんなさい。でも、おにぎり、ほっこり。」
⑤ 相手を立てる回答
「にほんのごはん、ちいさいハッピー、たくさん。いつも、ある。」
これらの回答は、語順が不自然だったり、表現が少し変だったりするけど、それ聞いた日本人の多くは、「あたたかいなあ」「嬉しいなあ」「一生懸命で素敵だなあ」と感じるんだよ。それは、相手への敬意・気持ち・好意・一生懸命さが強く伝わるからだよ。
最後に、文法は大切だよ。文法の勉強はやり続けてもらいたいな。
でもね、文法が完璧でも、会話が成立しないこともあるんだ。逆に、文法が間違っていても、相手の心に届くこともあるよ。
僕たち日本語教師も、ベトナム人学習者にはベトナム語で「ベトナム料理は美味しいです」と、ネパール人学習者にはネパール語で「ネパール人はやさしいです」と言えるように頑張るよ。うまく言えないかもしれないけど、頑張るよ。
そして、学習者たちには、間違いを恐れず、気持ちを伝える楽しさを知ってもらいたい。そのための教室づくりは、僕たち日本語教師の役目だと思っているよ。