2025年。お世話になりました。
本日は、「刺激」と「ウェルビーイング」についてです。ウェルビーイングを研究されている日本語教育の先生方のウィスコンシンでの発表に参加したところ、楽しく、幸せな気持ちになりました。
ちょっとぽっちゃりしている人が、ある日、誰かに「デブ」と言われ、それをきっかけに筋トレを始め、体が引き締まり、自信を持ち、人生が変わった、というようなお話を聞いたことがあると思います。私も大学2年のときに、ある人から「デブ」と言われ、ショックのあまり、食事がとれなくなり、3ヶ月で18キロ落ちて、周りから「すごい努力家だね」と言われたことがあります。勉強でも、仕事でも、人生でも、強い刺激をきっかけに、人が変わるとき、そのエネルギーの正体は、多くの場合、悔しさ、恥ずかしさ、怒り、恐怖、劣等感です。この力は、強く、短期間で人を動かします。でも同時に、「今の自分はダメだ」「何かを証明しないと価値がない」「評価されない自分には意味がない」という感覚が残ります。結果、誰かに認められないと動けなくなり、次の刺激がないと不安になり、休んでいる自分を責めたくなり、変われたけれど、安心できない状態が続きます。
ウェルビーイングは、「安心して生きられているか」「自分を嫌いにならずにすんでいるか」「他人の言葉に人生を振り回されていないか」が大切にされます。
刺激の話では、「刺激を受けて立ち直った人」「悔しさをバネに成功した人」の話が語られます。でも、同じ刺激を受けて、心が折れた人や挑戦をやめた人、自分を責め続けてしまった人の話は、表に出ません。ウェルビーイングは、うまくいかなかった多くの人も含めて考えます。
ダイエットの成功のかげで、摂食障害に陥ってしまった人、かえって太ってしまった人もいます。
実は、教育や職場の現場ともつながっています。間違いを指摘され、強い言葉で叱られ、表情や視線で否定される。それで一時的に良くなったように見えても、その後、発言しなくなり、挑戦しなくなり、その場から離れてしまった教え子の姿を何度も見てきました。
安心できる場では、「間違えても大丈夫」「できなくても、ここにいていい」「誰かと比べられない」という空気が生まれます。自分でやってみようと思えるようになります。これは、刺激とは違うエネルギーです。
ウェルビーイングは、刺激的な人生を否定していませんし、厳しい言葉をすべて悪だと言っているわけでもありません。だから、ウェルビーイングについて話す人は、押し付けもしません。押し付けたら、もっと多くの人が幸せになるのに…などと思ってしまったら本末転倒です。ただ、こうも警告しています。
「人を動かす仕組みとして刺激を常用する社会は、多くの人を静かに壊していく。刺激は、使い方を間違えると、依存させ、疲弊させ、他人にも同じ刺激を与える連鎖を生む」と。
地味ですが、安心できる空気をつくり、失敗しても居場所があると示し、言葉だけでなく、行動で尊重を見せる。派手ではありませんが、再現性があって、多くの人を壊さずに済みます。
最後に、安心は人を長く育て続けます。教育も、職場も、人間関係も。私も学びの途中です。今日の話が、皆さんの現場や日常で、何かを考えるきっかけになれば幸いです。今年一年お世話になりました。