「ずるい暗記術」
わたしは、隣にいた成績がパッとしないクラスメイトと同じように、まず、参考書を一生懸命に読んでインプットしてから問題集を解いて、最後に答え合わせをして、自分のできの悪さによく落ち込んでいたものです。
効率よく勉強したいなら、まず答えを見て、答えを覚えたあと、問題集を解いて、詳しく知りたいときに参考書を読む…。
『型』を使えば、対話もスピーチも質疑応答も討論会もできるようになりますが、そもそも『型』は、英語の小論文試験対策を、教え子たちと一緒に日本語に直したところから始まったので「画期的な発明ですね」と言われると恥ずかしくなります。
『笈川楽譜』を見た方から「すごい!天才ですね!」と言ってもらいましたが、中国語のピンインそっくりに仕上げたもので、ほかの先生方も全員わたしと同じようにしているだろうと思っていました。なぜなら、そうする前は、教え子たちはきれいな発音で話すことができず、即興スピーチや面接での受け答えができなかったからです。いま思えば、これも『ずるい学習方法』だったのかもしれません。
とはいえ『型』も『楽譜』も万能とは言えません。
学生が2回授業をサボってしまうと取り返しがつかなくなります。欠席した学生は、オンライン授業の録画を見て、遅れを取り戻そうとしますが、訓練の部分を飛ばして見ているからか、体験型授業のせいなのか、出席しないと上達できないようです。欠席した学生は、録画に出てくるクラスメイトたちが生き生きと発言している姿を見て、かえって自信を失い、モチベーションが下がってしまうのかもしれません。
そこで、体験型授業のためのアプリ制作を、CASIOさんにお願いしました。わたしが欲しいアプリは、ジムで腹筋30回、腕立て30回やるのと同じように、訓練を中心にしたものです。たとえば、ひとつのセンテンスを10秒以内に読み、1分以内に300字で話すといった訓練を、学習者に求めたいです。いつも、授業に出なくても、授業に出た人と同じ効果が出せたらなと思っています。
ところで、最後になりますが、世界の日本語作文コンクールを長く続けてこられた大森先生ご夫妻の「世界の日本語学習者」と歩んだ「夫婦の35年」が出版されました。わたしも、少しだけ書かせていただきました。わたしも大森先生のように、見返りを求めない親切なおじさんとして、これからも頑張っていきたいです。